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心に刺さったのでコピーだけれど残しておくことにする。






<第二十振武隊 穴沢利夫少尉の遺書より> 
二人で力を合わせて努めて来たが終に実を結ばずに終わった。 
希望を持ちながらも心の一隅であんなにも恐れていた"時期を失する"ということが実現して了ったのである。 
去月10日,楽しみの日を胸に描きながら池袋の駅で別れたが,帰隊直後,わが隊を直接取り巻く情況は急転した。 
発信は当分禁止された。転々処を変えつつ多忙の毎日を送った。 
そして今,晴れの出撃の日を迎えたのである。 
便りを書きたい,書くことはうんとある。 然しそのどれもが今迄のあなたの厚情に御礼を言う言葉以外の何物でもないことを知る。 
あなたのご両親様,兄様,姉様,妹様,弟様,みんないい人でした。 
至らぬ自分にかけて下さった御親切,全く月並の御礼の言葉では済み切れぬけれど「ありがとうございました」と最後の純一なる心底から言っておきます。   
今は徒に過去における長い交際のあとをたどりたくない。 
問題は今後にあるのだから。 
常に正しい判断をあなたの頭脳は与えて進ませてくれること,信ずる。 
ただしそれとは別個に,婚約をしてあった男性として,散ってゆく男性として,女性であるあなたに少し言って征きたい。 
あなたの幸を希う以外に何物もない。 
徒に過去の小義に拘る勿れ。 あなたは過去に生きるのではない。 
勇気をもって過去を忘れ,将来に新活面を見出す事。 
あなたは今後の一時々々の現実の中に生きるのだ。 
穴沢は現実の世界にはもう存在しない。 極めて抽象的に流れたかも知れぬが,将来生起する具体的な場面場面に活かしてくれる様,自分勝手な一方的な言葉ではないつもりである。 
純客観的な立場に立って言うのである。 
当地は既に桜も散り果てた。 
今更何を言うかと自分でも考えるが,ちょっぴり慾を言ってみたい。   
1.読みたい本 「万葉」「句集」「道程」「一点鐘」「故郷」   
2.観たい画 ラファエル「聖母子像」,芳崖「非母観音」   
3.智恵子 会いたい,話したい,無性に。 
今後は明るく朗らかに。 自分も負けず朗らかに笑って征く。   
昭和20年4月12日 .   利夫             智恵子様
穴沢利夫少尉 中央大學卒 陸軍特別攻撃隊 第二十期振武隊  昭和20年4月12日 沖縄周辺洋上で戦死 23歳